はじめに
2017年4月21日、朝5時48分。
ミウラサトシ(僕)は、神奈川県内の自宅で胸を押さえてうずくまっていた。
強烈な痛みが胸の奥から押し寄せ、息がうまく吸えない。指先から冷たさが広がり、思考が遠のきそうになる。

「まさか、これが心筋梗塞なのか——」

という言葉が頭をかすめたとき、僕は家族に119番通報をお願いし、救急車で病院へ搬送された。
病院の先生からは「よくこのタイミングで発見できましたね。早かったから助かりましたよ」と言われ、もし数分遅れていたら命の危険もあったかもしれないと告げられた。

あの日の出来事をきっかけに、僕の生き方も働き方も、大きく変わっていくことになる。

第一章 神奈川県警察向けシステム開発に携わる日々

  1. 高齢者講習システムの利用指導
    当時の僕は、神奈川県警察関連のシステム開発を行う会社に勤めていた。主に、自動車学校で実施される高齢者講習のシステムを作り、その利用法を指導したり、運用時に起こる不具合を修正したりするのが仕事だった。

具体的には、各自動車学校を回って——

「この画面で受講者のデータを入力していただきます」
「講習後はここで判定結果を印刷できます」
「もしエラーが出たらこのフォルダを確認してください」

といった説明をしながら、困りごとがあれば現地でサポートするのだ。学校によっては通信環境や端末のスペックがまちまちで、毎回ちがう問題が起きる。

「どうしてもエラーが直らないんだけど」

と呼び出しを受ければ、僕は鞄にノートパソコンや予備のパーツを詰め込み、県内あちこちの教習所へ出張していた。

  1. 不規則な生活とストレス
    この仕事はやりがいこそ感じていたものの、移動続きの毎日で食事も睡眠も不規則になりがちだった。朝早くから夜遅くまでバタバタし、時には週末に呼び出されることもある。
    仕事そのものはやりがいを感じられる一方、運動不足と過労、外食中心の食生活が重なり、気づけば体重も増加していた。

だが、そのときの僕は危機感を覚えることもなく、
「忙しいから仕方がない」
「今は仕事を頑張るときだ」
と自分に言い聞かせていた。

第二章 心筋梗塞という人生の急ブレーキ

  1. 2017年4月21日、朝5時48分
    そんな日々のなかで迎えた2017年4月21日金曜日。朝5時48分に感じた胸の激痛。
    僕は最初、「変な姿勢で寝ていて筋を違えたか、疲れが溜まっているのか」と思った。でも、息が苦しく、脂汗が噴き出すほどの痛みは明らかに尋常ではない。
    結果的に心筋梗塞と診断され、緊急手術が行われた。

ドクターは、「心臓の血管が詰まりかけていた。早期対応が奏功して助かったけれど、いろいろ生活を改める必要がありますよ」と厳しい顔で言った。

  1. 病室で考えた「健康第一」
    入院中、身体を動かすことすらままならない日々を過ごしながら、僕は初めて、「健康を失うとこんなにも何もできないのか」と痛感した。
    それまでは、とにかく仕事をこなすことが優先で、「まぁ大丈夫だろう」と健康を軽視してきた部分がある。

しかし、心筋梗塞で倒れ、「死ぬかもしれない」と思った瞬間——
「自分の命と心身をきちんとケアしていないと、仕事どころじゃない。周りにも迷惑をかける」
という当たり前の事実にようやく気づかされたのだ。

第三章 退院、そして仕事復帰

  1. 仕事への復帰と戸惑い
    手術後、数週間の入院を経て退院することができた僕は、会社に復帰したものの、医師からは「再発防止のためにも、しばらくは無理をしないように」と言われていた。
    実際、以前のように県内各地を飛び回るのは体力的に難しく、職場の上司や同僚と相談しながら仕事をセーブする日々だった。

「でも、チームに負担をかけたくない」「お客さんに迷惑をかけたくない」という気持ちは強くて、気を緩めるとまた無理をしそうになる。
そんなとき、妻や家族が「とにかく健康第一を忘れないで」と繰り返し声をかけてくれたおかげで、ペースを考えながら働くようになっていった。

  1. 仲間に支えられた日々
    職場のメンバーは「ミウラさん、無理は禁物ですよ」と気遣ってくれた。僕が行けない現場にはほかのメンバーがフォローして行ってくれたり、システムの不具合対応も協力してくれたりした。
    それがありがたい反面、
    「自分は何もできていないんじゃないか」
    という歯がゆさを感じることもあった。

でも、ふと気づいたのだ。
「自分が倒れると、結局みんながもっと大変になる」
ならばこそ、“倒れずに元気で働く”ことこそが、チームへの最大の貢献かもしれない。

第四章 新たな道へ

  1. 「ありがとうグループ」への想い
    その後、僕はいくつかの選択肢を考えた末、「もっと自分のペースで仕事をしながら、健康を大切にする生き方」を探る道に進む決断をした。
    そしてたどり着いたのが「ありがとうグループ」でのエアコンお掃除専門店フランチャイズ(ボランタリーチェーン)という新たな取り組みだった。

どうしてエアコンのお掃除か。
一つは、自分自身が心筋梗塞を経験し「空気環境や清潔さって実は健康に深く関わるのでは?」と意識が向いたことが大きい。
また、“感謝”を意味する「ありがとう」という言葉に、僕の気持ちが強く動かされたというのもある。

  1. 健康第一を伝える
    今、僕はこの「ありがとうエアコンお掃除専門店」のフランチャイズ展開を通じて、仲間と一緒に仕事をしている。その際に何よりも大切にしているのが、「健康第一」というメッセージだ。
    フランチャイズ店のスタッフや加盟店の皆さんと顔を合わせるたびに、必ずこう言う。

「まずは自分自身の心身の健康を大事にしてください。そこが土台です」

かつて、僕は不健康な生活のまま走り続けて倒れてしまった。だからこそ、「過去の自分のように倒れる人を増やしたくない」という想いが強い。

エアコン掃除という仕事は、時に高所作業や重い機材の運搬など、身体的な負担がかかることもある。だからこそ、自分の身体をまずはしっかりメンテナンスすることが大切なのだ。

第五章 日々の現場と「健康第一」の実践

  1. エアコンお掃除の現場で
    エアコンお掃除専門店のフランチャイズを運営する中で、僕たちは日々、お客様のお宅やオフィスを訪問する。
    夏場は猛暑のなかで汗だくになりながら清掃を行い、冬場は寒い空気に晒されながら高い脚立に登る。

そんなときこそ、スタッフが体調を崩してしまえば元も子もない。少しでも体調が悪ければ、無理をさせずに交代したり、作業日程を調整したり、休息を取らせるようにしている。
健康な状態で仕事をするからこそ、お客様にもより丁寧に、安全に作業を提供できる——それは僕の実体験から得た確信だ。

  1. 「ありがとう」の言葉と健康
    店名にも冠した「ありがとう」という言葉は、僕にとってただの社名ではない。
    「元気で働けてありがとう」
    「支えてくれる家族がいてありがとう」
    「仲間と一緒に仕事を進められてありがとう」
    こうした感謝の意識が、僕自身を含めスタッフの心を支えてくれる。

健康を損ない、心筋梗塞で倒れたときこそ、周りの支えのありがたさを痛感した。だから、今の僕は自分たちの仕事を通じて、“ありがとう”を循環させていきたいと願っている。

第六章 僕が伝えたいこと

  1. 「まずは心身の健康を大切に」
    かつての仕事では、システムの不具合を直しに行くのが日常だった。しかし、もし自分自身が壊れてしまっては、客先でのサポートどころではない。
    心筋梗塞は言うなれば、“身体のシステム”が重大な不具合を起こしたようなものだ。

いま僕が「ありがとうエアコンお掃除専門店」の仲間たちに必ず話すのは、「自分の身体を軽視しすぎないでほしい」という一点に尽きる。

体調が怪しいときは、しっかり休息を取る
定期検診や健康診断を受ける
栄養バランスや睡眠を疎かにしない

こうした基本を、お互いに声をかけあって守ることで、長く安心して仕事が続けられる。お客様に対しても、心身ともに健康な状態で接することができる。

  1. 僕自身の今後
    僕はこれからも、「健康第一」を柱として仕事を続けていきたい。なぜなら、どれだけ仕事が忙しくても、人生の土台が壊れたら幸せにはなれないと痛感したからだ。
    エアコン掃除という仕事は、少し意外かもしれないけれど、空気や環境を清潔に保つことで人々の健康に貢献できる部分もあると思っている。

まったく別業界から飛び込んだ僕だからこそ、新鮮な目線で新しいサービスを模索しながら、スタッフや加盟店の皆さんと「ありがとう」を形にする方法を考えていきたい。

おわりに
2017年4月21日、朝5時48分。
もしあの瞬間、心筋梗塞で倒れずに健康なままだったら……?
そんなふうに振り返ることもあるが、同時に、「あの経験があったからこそ、僕は健康の大切さに目が向いた」とも感じている。


僕は「ありがとうグループ」のエアコンお掃除専門店という“フランチャイズの場”を通じて、仲間たちと日々顔を合わせ、雑談の中やミーティングの中で自然にこう伝えるのだ。

「みんな、本当に身体を大事にしよう。
健康でいるからこそ仕事も家族も大切にできるし、ありがとうの気持ちをお客様に届けることができるんだよ」

仕事は大事だし、お客様に最善を尽くすのも大切。でも、それ以前に自分が元気でいなければ意味がない。
このメッセージは、僕自身が心筋梗塞で倒れ、しんどい思いをしたからこそ、リアルに届けられるものだと思っている。

僕と同じような経験をする人が一人でも減るように、そして、「身体が資本」「健康こそ最大の財産」ということを忘れずにいてほしい。
そんな思いを抱きながら、今日も「ありがとう」と一緒に幸福の輪の拡大へ向かう。

——ミウラサトシ