恐竜の時代から多様化した鳥の足跡と、人間社会での学び

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【序章で感じた驚き】

普段、鳥を意識するタイミングといえば、朝方に外から聞こえてくるさえずりや、公園で見かけるカラスやハトくらいかもしれません。まるで「当たり前」の存在としてそこにいるように思いがちです。けれど今回の国立科学博物館の特別展で改めて知ったのは、彼らは決して当たり前でも、単なる背景でもなく、奥深い歴史と多彩な生態をもつパートナーのような存在だということ。

鳥たちを丁寧に見つめると、「どうしてそんな色を持っているのか」「なぜそこを住処に選んだのか」「どんなふうに天候や環境に適応しているのか」――まるで人が仕事で新しい市場を探る時のような“発見と連想”が次々に湧いてきます。この不思議な感覚は、知的好奇心を刺激し、自然への感謝の念を高めてくれるように思いました。

それは例えば、ある人が「どうして自分はこの道を選んだのだろう」と立ち止まって考えたときにも似ています。何かを「深く学びたい」と思う人には知識欲がくすぐられ、何かを「変えたい」と思う人には行動の後押しになる。そうやって私たちは自分の旅路を重ね合わせていけるのかもしれません。

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はじめに:特別展「鳥」に出会ったきっかけ
先日、国立科学博物館で開催されている“鳥”の特別展に足を運んできました。実は私自身、普段はあまり野鳥観察をするタイプではなく、「鳥ってかわいいし、飛ぶのがすごい生き物だな」くらいの認識しかなかったのです。ところが、今回の展示を見てみると、その奥深さにちょっと圧倒されました。

展示の冒頭では、ゲノム解析によって明らかになった鳥類の系統研究や、鳥がどのように声や体の動きでコミュニケーションするか、といった内容が紹介されていました。さらに、獣脚類恐竜から進化したルーツの話や、現代にいたるまで多様に生き延びてきた約11,000種もの鳥たちの話題まで。いわば「鳥の百科事典」のように、広く深くまとめられていたのです。

ここでは、そんな特別展の内容を、私なりの視点――少しやわらかく、かつマーケティングやコーチングの世界になぞらえて――遠回しにお伝えしたいと思います。日本人は直接的な表現を避けがちといわれますが、あえてこの「遠回し」なアプローチが、鳥の進化に重なるようにも感じました。

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【好奇心が動く、いろいろな人の視点】

鳥の世界を覗くとき、ある人は「どうしてこんな美しい羽を持つの?」と純粋な疑問を抱き、またある人は「こうした進化はどんな環境要因に支えられたのだろう」と学術的興味を深めるかもしれません。あるいは「飛べることがうらやましい」と感じる人、「群れでのコミュニケーションがすごい」と驚く人など、着目するポイントは実にさまざまです。

それは、人が新しい学びに直面したときの反応そのものにも思えます。なぜこんな変化が起きたのかと理屈を探りたい人、何を得られるのかと目的を見極めたい人、どんな手順で進めるのかと方法を欲しがる人、すぐに行動してみたくなる人――いろいろな性格や価値観が混ざり合うからこそ、学ぶ側も教える側も面白い発見があるのではないでしょうか。

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1.鳥の進化から見る“マーケティング戦略”
恐竜時代から“市場”を広げ続けた鳥たち
まずは鳥の歴史に圧倒されました。白亜紀の時代から複数の系統を持っていた獣脚類恐竜の子孫が、時代とともに新しい環境へ広がり、新生代になってからは爆発的に多様化したのだそうです。結果、現生鳥類は約11,000種。空・陸・水中、そして高地や極地まで、地球上のどこでも勢力を伸ばしています。

私はこの話を聞いて、「まるでマーケティング戦略だな」と感じました。一つの企業が、最初は限定された市場(恐竜時代の狭い環境)で生き延びていたところから、徐々に新しい市場(海辺、山、極地など)を開拓していった図にも通じるのです。“恐竜”という巨大な時代の中で、なんとか生き延びた小さな存在が、やがて空を自由に舞うトップランナーになった――これほどドラマチックな“シェア拡大”もないと思いませんか。

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【挑戦を続けることの意義】

このエピソードから感じるのは、“挑戦をやめなかった”ということ。大きな存在に押しつぶされそうでも、あきらめずに別の可能性を探り、次の環境を開拓していった。その積み重ねの結果が、空を制するほどの多様化だったのかもしれません。私たちが何か新しい企画やサービスを始めるとき、最初は小さく脆弱な存在でも、粘り強く対応していけば大きく花開く可能性がある――そんな希望を感じさせます。

また、「うまくいかない」と思っても、実はまだ進化の途中かもしれません。今のやり方を微調整し、新しい市場を探ることで、思わぬヒットにつながる。鳥たちも最初から空を飛んでいたわけではなく、少しずつ羽毛を発達させていった歴史があるのだということを思い出すと、勇気づけられるように思います。

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2.鳥のコミュニケーションに見る“コーチング”のヒント
遠回しなさえずりで伝える、鳥たちの知恵
鳥は、視覚(きれいな羽の色や飾り)や声(さえずり)を用いてコミュニケーションする、という話がありました。多くは一夫一妻で、夫婦合作で子育てをする種が多いそうです。異性へのアピールも、直接的に「好き!」と言うわけではなく、鮮やかな羽色やダンス、あるいはさえずりの上手さなど、遠回しの信号が行き交うのだとか。

ここに、私は「コーチング」の要素を感じました。相手を正面から説得するのではなく、「あれ、なんだか気になるな…」と思ってもらうように仕向ける。日本人のコミュニケーションにも似ているかもしれません。特に、モズの高鳴きなどは、縄張り宣言をしているとも言われつつも、一見すると「なんか叫んでるなぁ」という曖昧な感じ。「直接的には言わないけれど、この音域で鳴いているのはちょっと困るかもしれませんね…」みたいなやり取りが、鳥の世界でもなされていると想像すると、ちょっとくすっとしてしまいます。

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【人のコーチングとの重なり】

コーチングでは、相手の言葉を引き出したり、自発的な行動を促したりするのが肝心だとよく言われます。鳥のさえずりも、相手に対して明確な要求をぶつけるのではなく、雰囲気を醸成し、相手に「この呼びかけに応じてみようかな」と思わせるところがあります。だからこそ、強引ではないソフトな連携が生まれるのかもしれません。

また、コーチングやカウンセリングでしばしば指摘されるのは、「相手をリスペクトする姿勢」です。鳥同士のやり取りを見ると、一見簡素に見えて、実はお互いを観察し合い、尊重し合うポイントがあるのではないか――そんな考えが頭をよぎります。私たちも、プロジェクトを進めるとき、チームメンバーの小さなサインを見逃さないことが、大きな成果へとつながるかもしれません。

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3.鳥の魅力と“アンブレラ効果” ~あなたを守る大きな傘~
鳥は「アンブレラ種」と呼ばれることがあります。これはその生き物を守ることで、その生息域全体の生態系をまとめて守れる、という考え方です。例えば「コウノトリを保護したら、その周辺の湿地やそこに暮らす生き物まで一緒に保護できる」ような感じです。ビジネス風にたとえれば、企業の看板商品を支持してもらえれば、周辺の関連サービスやブランドイメージも一緒に向上するのに少し似ています。

特別展では、コウノトリやトキなど、一度は日本から姿を消しそうになった鳥たちを再び増やす取り組みが紹介されていました。そこにかける方々の思いは、遠回しに言えば「鳥を守る=地域を守る=私たち自身の暮らしを守る」こと。直接「守りましょう!」と声を荒らげるのではなく、鳥たちが戻ってきた自然の風景を見ると、「ああ、豊かな環境って大事だな」と自然に思えるから不思議です。

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【共通のビジョンを育む力】

アンブレラ効果のエピソードに触れていると、私たち人間の社会でも「一つの象徴的な目標を共有することで、その周辺まで恩恵が広がる」というパターンがあると感じます。特に、企業理念やキーワードなどはそれ自体がアンブレラのように機能して、関連分野や周辺顧客層まで巻き込む力を持ちうる。まさに「コウノトリが帰ってくる=湿地や水辺も守られる」という構図が、ビジネスやコミュニティにおいても生きるのだと思います。

また、この保護活動は、すぐに成果が出るわけではなく、長期的に取り組む必要がある点も学びになります。あわてて結果を求めすぎると見誤るかもしれない。しかし、ある時点で鳥が帰ってきた瞬間に、「これまでの積み重ねは無駄ではなかった」と確信できるのではないでしょうか。コツコツと積み重ねる姿勢に共感する人にとっては、とても励みになるエピソードだと思います。

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4.絶滅の危機が教えてくれる“継続の難しさ”
島に住む鳥ほど、脆(もろ)さが表面化
IUCNが指定する絶滅危惧種のうち14%を鳥類が占めるという事実や、この500年ほどの間に187種もの鳥が姿を消したという話はショッキングでした。特に島に生息する種が外来種や狩猟などの影響を受けやすい、というのは「小さな市場で独自のビジネスを展開していたら、外資に食われてしまう」ような構図と少し似ています。

クマゲラ属の大型キツツキや、ライチョウ、オガサワラカワラヒワなど、実際に姿を消しつつある(または消えた)例が紹介されていましたが、何とも切ない気持ちになります。一方で、各地で地道に保護活動が続けられているそうなので、遠回しながらも「諦めずに取り組んでいくことこそが、次のチャンスを生む」というメッセージを感じました。これもまた、“企業のブランドを守り続ける姿勢”にも通じるのかもしれません。

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【進化か停滞か】

島という閉ざされた環境は一方で独自の進化を生む可能性が高いものの、外来種の侵入や環境変化に弱い面もあります。ビジネスでも「ニッチな分野で独自の強みを発揮しているが、大手が参入してきたら一気にやられてしまう」という状況があり得ます。ここで学べるのは、「継続的に学び、周囲の変化を見逃さない」ことの重要性。ある時点で立ち止まっていては、いずれ新しい風に押されてしまうかもしれない――そうした危機感が、逆に次の一手を育てる力にもなるはずです。

また、保護活動のように、一見成果が見えにくい取り組みでも、信じて続けることで実際に絶滅を免れるケースがあると知ると、自分の挑戦や学習も同じく諦めずに続けてみたいと思えるでしょう。もしかすると、ふとしたきっかけで風向きが変わり、新しい環境への扉が開くかもしれないのです。

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5.化石から見る“先行投資”の大切さ
展示の中盤には、始祖鳥(アーケオプテリクス)や原羽毛が見られる化石の解説がありました。中生代の鳥類が、まだ“試行錯誤”の段階で少しずつ飛べる体を進化させていたわけです。私はこれを見たとき、「まだ世の中に需要があるかどうか分からない段階で、独自技術を育てる企業」に重ね合わせました。

化石が語るのは、「羽毛は鳥だけの専売特許と思いきや、鳥の出現以前から恐竜が“羽毛に似たもの”を持っていた可能性がある」ということ。言い方を変えれば、当時の恐竜がどこかで役立つかもしれないと一部を変化させていった結果、後世の鳥が空を飛ぶ大きなアドバンテージを得たとも考えられます。まさに“先行投資”が大成功したような物語だと感じました。

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【リスクとリターンの微妙なバランス】

先行投資に踏み切るとき、必ず「うまくいかなかったらどうしよう」という不安がつきまといます。恐竜が羽毛らしきものを獲得した時点では、それが飛ぶために本当に役立つかどうかは定かではなかったかもしれません。それでも、どこかに可能性を見いだし、結果的に大きく花開いたわけです。

私たちが新しいスキルやビジネスモデルを身につけようとするときにも、似たような心境があります。最初は「これ、本当に意味あるのかな?」と思いつつ、学びや練習を重ねるうちに、ある日大きな武器になる。「羽毛」のようなものを育む時間を惜しまない姿勢が、将来の成功を左右するのかもしれません。

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6.多様性と“ポートフォリオ”:飛べない鳥も大切な存在
ペンギンのように潜水に特化して飛ばなくなった鳥や、ダチョウのように脚力で地上を走る鳥もいます。一見、「飛ぶ方が鳥らしいのに、どうしてわざわざ飛行能力を捨てたの?」と不思議になりますが、それこそ多様性の戦略。飛べなくても海でエサを獲れるなら十分生きていけるわけです。

これは、投資の世界で言う「ポートフォリオ分散」にも通じると思います。もし鳥の世界が「飛べる種」だけしかいなかったら、ある環境変化で一気にピンチに陥るかもしれない。けれど、飛べなくなったからこそ得た新たな生態系で成功している種もいるからこそ、鳥全体として強いのではないでしょうか。遠回しに「色んな選択肢を持っておく大切さ」を教えてくれているように感じます。

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【意外な強みを活かす】

多様性の価値は、私たちのキャリアにもいえることかもしれません。周りがみんな同じスキルを競っているとき、自分だけが「飛ぶ力」を捨てて別の能力に特化してみたら、それが新しいニッチを切り開くかもしれない。多くの人が空を目指しているからといって、それが正解とは限らない。

もちろん、一見すると回り道のように見える選択でも、そこに独自の道を作れば、自分に合った生き方ができるのではないか――そう考えたとき、ペンギンの潜水能力やダチョウの脚力はまさに“自分だけの強み”を発揮している好例かもしれません。

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7.翼手類・翼竜類との違いと“差別化戦略”
興味深かったのは、「羽ばたいて飛ぶ能動的飛行」を手にしたのは、脊椎動物の中では翼竜類・鳥類・翼手類(コウモリ)の3系統のみだという点です。みな違う骨の構造でそれを実現している、というのは不思議なロマンですね。 製品開発の世界でも、「違う企業が全く別の技術アプローチをとって、同じ機能を実装する」ことがよくあります。要は“同じゴールを目指すが、手段は全く別”という感じです。こうした差別化戦略が、いろいろな方向から花開くのは面白いものだと思います。

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【ゴールは同じでも道は多様】

多くの人が「売上を伸ばしたい」「新たな顧客を得たい」「自己成長したい」などのゴールを設定するとき、そこへ至るアプローチは必ずしも一つではありません。コウモリは前肢の指の骨を広げて翼を形成し、翼竜はまったく別の骨格を使い、鳥は羽毛で飛ぶ。結果的に「空を飛ぶ」という同じゴールを達成しているわけです。

これは私たちが一つの大きな夢を持つときにも、周りの人と同じアプローチを踏襲する必要はないという示唆かもしれません。自分なりの方法を探り、一見奇抜に思えるやり方でも成功につながる可能性がある。逆にいえば、誰かの成功パターンを鵜呑みにするだけではなく、オリジナルの道を模索するのも成長への一歩でしょう。

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8.渉禽類や卵の色――細かな生態に宿る“ブランディング”
シギやチドリ、ツル、サギ、コウノトリなど、いわゆる“渉禽類”と呼ばれる水辺の鳥の分類についても、ゲノム解析でさらに複雑だと分かったそうです。これを知ると、鳥の世界は一見シンプルに見えて、実は“ブランド”が入り乱れているようなものかもしれません。
また、卵の色や模様にも環境への巧みな対応があることから、これも遠回しながら「自分の居場所(巣)でどう映えるか」を徹底的に追求しているように感じます。まさにブランディングの極意。「どんな背景で自分を守り、魅力を高めるか」鳥たちの方が人間より優秀かもしれません。

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【小さな違いで大きく変わる印象】

ブランディングは、ロゴや色づかい、商品パッケージなどのわずかな要素が大きな差を生むことがあります。鳥の卵の模様や色も、それぞれの環境に溶け込むため、あるいは捕食者に対する対策など多様な目的を果たしているそうです。「ほんの少しの違い」に気づくことで、大きく生存率が変わる。この発想は、私たちが仕事上で「ちょっとした改善」をする意味合いにも通じるでしょう。

実際、企業のサービスひとつとっても、名前の付け方や見せ方を少し変えるだけで消費者の反応が激変することがあります。卵の色の違いが生存の要になるように、ブランディングのちょっとしたニュアンスが勝敗を左右するのではないでしょうか。

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9.渡り鳥と“フライウェイ”は国際ビジネスのよう
何万キロも飛ぶ渡り鳥がいるというのも驚きです。オオソリハシシギが、ほぼ休まずに11,690kmを8日あまりで飛んだ記録なんて、本当に信じられません。その渡りルートをフライウェイと呼び、保全には複数の国が協力しなくてはならない――まさに「国際ビジネス網」のようです。
ちょっとした環境変化や中継地の喪失が、渡り全体に影響するという話を聞くと、ビジネスチェーンが一カ所でも崩れると全体が崩壊するのと似ている、と感じました。遠回しに「一部分がおろそかになると、すべてに響いてくるよ」というメッセージのようにも思えます。

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【大局観と小さな要素】

ここから学べるのは、全体を俯瞰する大局観の重要性です。渡り鳥は中継地の環境がちょっと変わっただけで大きく行程を変えざるを得ない。私たちが複数の拠点を持つ企業を運営するとき、ある一拠点の不具合が全体の営業に影響したり、サプライチェーンが止まったりするリスクがあるわけです。

また、渡り鳥は目的地を共有しながらそれぞれのルートを通っていきますが、どのルートでどう休息し、どの国と連携するかで安全や効率が大きく変わる。これはまさに国際ビジネスを展開する上で、パートナーやローカル拠点をどう選ぶかに通じるといえるでしょう。

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10.猛禽類の進化と“新生代初期の大逆転”
タカやフクロウが、実は新生代の初期に共通の起源をもつと分かったそうです。いまは昼行性・夜行性で分かれていますが、元々は同じような祖先から枝分かれしていったのだとか。
ビジネスでも「昔は同じ業界にいたのに、あるときから昼夜のごとく真逆の方向に進化していった企業同士」がありますよね。遠回しに「何か決定的なきっかけで戦略を変えたことで、互いにまるで違う道を行くようになったのかもしれない」と、フクロウとタカの話を眺めながら想像するのも楽しいものです。

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【戦略の分岐点】

タカは昼の世界で視力を活かし、フクロウは夜の世界で聴力や夜目の能力を発達させる道を選んだ――どちらも捕食者として成功を収めています。人間の企業戦略でも、同じ製品カテゴリから出発したのに、ある企業はハイエンド路線へ、別の企業はローコスト大量生産路線へと分かれ、それぞれ大きく成長する場合があります。

こうした分岐点で、当事者たちは「今こっちへ舵を切ると、戻れないかもしれない」という不安や期待を抱えながらも、大胆に行動するのでしょう。タカとフクロウの分かれ道を眺めると、戦略決定の奥深さに思いを馳せずにはいられません。

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11.つがい外交尾とモズの高鳴きから学ぶ“曖昧な調整力”
スズメ目でつがい相手以外との交尾が起こる現象(つがい外交尾)や、冬場にモズが高鳴きで餌の確保をアピールするなど、鳥の“恋愛模様”もなかなか興味深いところです。
一見すると「浮気?」とか「威嚇?」と直接的にラベルを貼りがちですが、この音域での意思表示や、複雑な動機の絡み合いを知ると、何とも微妙な調整力を感じます。

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【人間関係にも似た緩衝ゾーン】

人間社会でも、ある種のグレーゾーンがあってこそ関係が円滑に回る場合があります。直接ストレートに言ってしまうと角が立つので、別の行動や雰囲気で伝える。鳥たちが自分たちの世界で“曖昧なサイン”を送り合っているのを見ると、そのやり方も一つの知恵なのかもしれません。

ビジネスで「これ以上踏み込まないで」と相手に伝える際にも、あえて柔らかなやり取りを選ぶことがあります。はっきり言うよりむしろ効果的な場合があるのは、鳥のコミュニケーションと重なりを感じるところです。

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12.日本列島が“大陸へ逆輸入”? 意外な海外展開
大陸と地続きだった時代に、日本で進化した鳥が逆にアジア各地へ飛び出していった可能性がある、というのも面白いです。まるで日本企業が国内で生まれ、やがて海外進出を果たす姿と重なります。
“ガラパゴス化”という言葉もありますが、鳥の場合、孤立した環境に適応すると独自の進化を遂げる一方で、ふとしたきっかけで世界へ羽ばたくこともある。遠回しに、ビジネスの世界で海外展開を見据えた企業のストーリーに似ているような気がします。

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【グローバルとローカルの融合】

日本で独自に育まれた技術や文化が、海外に出ると大きく受け入れられることがあります。寿司や漫画などが良い例かもしれません。鳥の例も、「国内でマニアックな進化をしていた種が、気づけば海外の生態系でも生き延びている」という発想につながりそうです。

これは“どんな環境でも自分の強みを活かす”という姿勢でもあるでしょうし、逆に海外の風土に合わせて変化する柔軟性ともいえます。結局、大事なのは「持ち味を失わずに、新天地で新しい価値を作り出すこと」。鳥が日本列島から海外へ飛び立つように、私たちも自分の強みを武器に新しいフィールドへ進めるかもしれません。

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13.方言・警戒声・亜種――ちょっとした違いが大きな違いに
シジュウカラは「ヘビ!」に相当する警戒声を出して仲間に知らせるとか、エナガの亜種シマエナガは頭が真っ白でかわいいとか。こうした地域ごとの違いが、大きな意味を持つのが鳥の世界です。
私たちも「方言」や「ローカルルール」が地方によって違うのと同じですね。一度異なる地域へ行くと、お互いの意思疎通が少し難しくなる。この“生殖隔離”にまでつながってしまうかもしれない――というのも、ちょっとした違いが大きな結果を生む事例を想起させます。

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【微差は大差になる】

ビジネスの場面でも、地方支店や海外拠点では「言葉のニュアンスの違い」「商習慣の異なり」によって結果が大きく変わることがあります。少し丁寧に説明しないと誤解が生じたり、思わぬトラブルに発展するかもしれません。鳥の方言や亜種を見ていると、「同じ種でも微妙に違う」からこそ新しい進化が生まれるというプラス面もあれば、コミュニケーションが難しくなるというマイナス面もあるということ。

大切なのは、こうした差異を受け入れ、楽しむことかもしれません。エナガのバリエーションをいとおしむように、人間社会でも「ちょっとの違いを大事にする」ことが、新たなシナジーを生む土台になるのではないでしょうか。

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14.フウチョウやダーウィンフィンチに見る“ブランド拡張”の妙
フウチョウ科(ゴクラクチョウ)がニューギニア周辺で多様化している話や、ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチがたった1種の祖先から15種に分化した話もとても刺激的です。
企業のブランド拡張で、「派生商品がどんどん増えていく」様子を思い出しました。ちょっと環境が違えば、くちばしの形や羽色まで進化し、それぞれのニッチを獲得する。これはもうマーケティング教科書レベルの話では、と思うほど見事な“適応放散”です。

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【多角化とリスクマネジメント】

ブランド拡張を考えるとき、どうしても「うまくいくかな?」という不安が先行するかもしれません。しかし、鳥たちが示すように、ある環境に特化した形質を獲得することで完全に新たな生態系を開拓できる可能性があります。同時に、「自分の得意領域を見極めて、そこに合わせて変化する」ことが成功へのカギなのかもしれません。

ダーウィンフィンチは、くちばしの形状が大きく違う種類がいくつも誕生し、それぞれが別の食べ物を狙うことで共存している。ビジネスにも同じことが言えて、ある程度差別化が図れれば市場での競合を避け、独自のポジションを築けるでしょう。そうした視点は、新規事業を考える際にも活用できるはずです。

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15.現代の研究と“GPS活用” ~データが拓く未来~
特別展では、鳥類の研究に最新技術が取り入れられていることも紹介されていました。GPSを使って渡りのルートを追跡したり、ゲノム解析で意外な近縁関係を解き明かしたり。
これはまさに現代企業がデータを活用して市場分析や顧客動向を探るのと同じ。遠回しに「過去の化石や伝統を大事にしつつ、未来への投資を惜しまない」という両立が大切だと教えてくれているように思えます。

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【テクノロジーを活かす柔軟さ】

伝統や化石(歴史的な知見)を踏まえたうえで、新たな手法(GPS・ゲノム解析)を組み合わせれば、鳥たちの生態を一層深く理解できる。これも「古い知識を捨てるのでなく、そこに新技術を織り込んでアップデートを図る」という姿勢の大切さを示しています。

人間の仕事でも、昔ながらのノウハウとIT技術を融合させる企業が増えています。たとえばアナログなサービスにデジタルシステムを追加し、顧客データを分析して新しい価値を提案する――まさに鳥の研究が進化しているのと同じ流れを感じますね。

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16.鳥と共に暮らす地球 ~大切に守りたい環境~
最後に、この特別展のメッセージとして強調されていたのは、鳥と共に暮らす地球を守ることの大切さです。私たちは鳥が花粉を運び、種をまき、あるいは捕食・分解などのさまざまな役割を果たしているおかげで、豊かな自然の恵みを受けています。

バードバンディング(標識調査)の歴史もすでに100年が続き、全国のボランティアが協力して基礎データを集めているとのこと。企業間のアライアンスにたとえるなら、“共通の目標を持ち、多くのステークホルダーが地道に支え合っている”状況でしょうか。直接「環境を守ろう!」と叫ばなくても、鳥たちが戻ってきた自然の風景を見ると、「ああ、自然環境って尊い」と実感できるものです。

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【人が行動を起こすきっかけ】

環境保護やCSRの取り組みでも、無理に「やりましょう!」と押し付けるより、実際の風景や生き物を見せ、価値を感じてもらうアプローチのほうが効果的なことがあります。鳥が戻ってきた地域を訪れた人は、「言葉で説得されるよりもずっと明快だ」と気づくわけです。

私たちが何かを変えようと思うときも、単に理屈やデータだけでなく、「なるほど、こうなると素晴らしいんだ」と肌で感じられる瞬間が必要かもしれません。それこそが行動を起こす大きな原動力になるのです。

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おわりに:鳥たちの物語から学ぶ、静かなるヒント
今回の特別展を通じて私が強く感じたのは、鳥たちは恐竜から生き延びただけでなく、むしろ世界中の環境を開拓してきた“マーケティング上手”であり、また互いに声や姿でコミュニケーションを図る“コーチングの達人”でもある、ということです。
彼らは直接的に「自分たちはこんなにすごいんだ」と語るわけではありません。むしろ、さえずりや進化の痕跡を通じて、私たちに遠回しにメッセージを届けてくれているかのように感じます。

実際に現代の研究(ゲノム解析やGPS追跡など)が進むほど、「こんな所にも鳥が!?」「こんな関係があったなんて!」と新たな発見があり、まだまだ私たちの知らない“鳥の世界”が続いているのでしょう。
日本人が得意とするかもしれない“遠回しの表現”になぞらえれば、鳥を守ることは地球環境を守ることにほかならず、それは結局私たちの暮らしを守ることにもなる――と。

普段、何気なく空を見上げるとき、「あの鳥、どこから来たんだろう?」と少し思いを馳せるだけでも、自然界のネットワークを感じられます。ビジネスや人間関係においても、「鳥のような視点」で、空を広く見つめ、まわりとほどよく連携していく柔らかいスタンスを学んでみてもいいかもしれません。

特別展「鳥」、なかなか奥が深いですよ。